壊れてしまった指輪のお修理

2024.03.26

壊れてしまった指輪のお修理/

こんにちは。
久しぶりのコラムになりますね。
今日は、少し珍しい指輪のお修理を受けたので、その過程をコラムでご紹介したいと思います。

ものすごい形にひしゃげてしまった指輪です。


トップのハート部分にもこ傷が付いていますし、腕の付け根もちぎれかかっているのが見えますね。
人に置き換えると、重傷と呼べる状態だと思います。

実はこの指輪、実際に事故に遭われた方が身に付けていたものです。
その方も大怪我を負われたのですが、奇跡的に命は助かられて、私もこのお話を聞いた時は
心の底から「よかった・・!!」と思いました。

そしてだいぶ前に、こちらの指輪はサイズ直しを承っていたので、なんとなく元の形は分かっていました。



まずは、指ややっとこを使って、元の形に近づけてみます。

大体こんな感じでしょうか。
職人と相談したところ、元の腕は使わない方が良いと言う事になりました。
ここまで曲がってしまうと、いくら形を元に戻したとしても、金属自体が金属疲労を起こしている
可能性があるのです。
そうなると、いつまた折れてしまうかも知れません。

そこで、指輪の腕自体は1から作り直す事にしました。


トップの部分は、出来るだけこのままでお修理する事にしました。
この指輪は、旦那様が、奥様に婚約指輪としてご自身でデザインしたものなので
残せる箇所は、出来るだけ残したいのです。

トップの部分と腕は、後からポロリと外れてしまいました。
この元の腕に忠実に、新しい腕を作っていきたいと思います。

プラチナの棒です。
これを指輪の腕に成形していきます。


この棒を叩いて、指の腹側にあたる部分を広げていきます。


横に元の指輪の腕を置きながら、形を寄せていきます。



なましながら、金属の棒を巻いていきます。
(※なます→金属に火を当てて、金属を柔らかくする事)


少し近付いてきたでしょうか。




さらにやっとこや芯がねを使って、形を整えていきます。
形を整えながら、おおよそのサイズも出していきます。


右側が元々の腕、左側が成形したものです。
良い感じになってきました!


ここで、もう少し指輪のサイズをシビアに出していきます。
いらない部分をカットします。



実際にトップを挟んで、バランスを見ます。
良いですね。



細かいサイズと、形を丁寧に整えていきます。


右側が元々の腕、左側が成形したものです。
こちらで、腕は一旦完成としました。
強度を考えてと、仕上げの削りも考えて、元よりも少し厚めに作っています。
ここから、トップに溶接していきます。




トップと腕がきっちり合うように設置して


火を入れていきます。
ダイヤモンドは比較的、火に強い石なので、今回は石を外さずに溶接します。
指輪がプラチナ製なのも大きいですね。プラチナはとても熱伝導率が低いので
石にダメージがいきにくいです。

とは言え、一番良いのは石を外してから溶接する事です。
ただ今回は、トップの部分もダメージがゼロではなかったので
爪を起こしたりすると爪が折れてしまう可能性がありました。
そうなると、せっかくの指輪を(形を似せられたとしても)大幅に手を加えないといけなくなるので。
職人が慎重に慎重に進めました。



なんとか無事に溶接が終わりました。
石にもダメージはありません。



サイズもバッチリ出せましたね。
ここから、完成に向けて、形を整えていきます。



やすりで大まかに形を整えて


紙やすりのついたリューターで、表面を滑らかにしていきます。



これは、「へら」と言う道具で、プラチナの表面を更に滑らかにしているところです。
これを使って、小さな凹みなどもならしていきます。



「バフ台」という、大きな磨き粉のついた布が回っている台で仕上げ磨きをしていきます。


洗浄機で、磨き粉を落として




これで第一段階の磨きは完了です。どこも良い輝きを放っていますね。
ハートの部分も、傷が多かったので、一旦つや消しを落としました。


指輪の腕に押してあった刻印を、新しい腕にも再現していきます。



ハートのつや消し部分も再現していきます。
今回は、スポンジのやすりとガラスペンで再現してみました。


こんな感じでしょうか。



つや消しに当たらないように、最後の磨きをしていきます。


完成しました!


奥が、最初にに付いていた腕です。
良い感じに再現できたのではないでしょうか?




これで修理は完了です!

写真で説明すると長い長い(笑)。
1つの修理をするのに、これだけの工程を重ねて初めて、納得できるものが出来上がります。
いつもアトリエにカメラを持っていくのを忘れてしまい、ベストショットを撮り逃しているのですが
これからは、きちんとカメラを持って行こうと思いました。

お客様にも「指輪が綺麗になって戻って来て、気分が晴れた思いです。」と仰って頂き
とても嬉しかったです。
そのお言葉が、何よりのご褒美ですね。
ご依頼下さり、ありがとうございました!