ダイヤモンドとゴールドのエンゲージリング

2018.02.11

ダイヤモンドとゴールドのエンゲージリング

こんにちは。
久しぶりのコラムになってしまいました。

写真は、以前にお作りしたエンゲージリングです。
このリングは、お客様のご要望により、とても個性的なものになりました。
今日はそのお話です。

お客様からのご要望。
それは「旦那様の親御さんの持ち物であった、金の指輪を溶かしてエンゲージに使いたい」
というものでした。

お客様からお預かりした指輪

これがその指輪です。
よく見ると、白い花のような箇所が・・・。
新品の頃は、彫りと別の貴金属でお花をかたどっていたのでしょう。
今ではあまり見ない作り方です。

そして、これは24金でした。「純金」です。
お客様は、これを溶かして指輪の一部にされたいとの事でした。

「溶かして作る」
これは、簡単そうに聞こえて実は複雑です。
指輪の作り方には、大きく分けると(本当に大きくですが)2つあります。
1つは、金やプラチナを叩いたり伸ばしたり、ろう付け(溶接のようなものです)して作る方法。
もう一つは「鋳造」という方法です。

「鋳造」の詳しい説明は、また別の機会にするとして
今回の「溶かして作る」に、この鋳造は当てはめられませんでした。
というのも、鋳造の場合5グラムの指輪を作る時、5グラムの金では作れません。
もっと沢山の金が必要となり、結果、お預かりした金と別の金が混ざってしまうことになるのです。
お客様にお聞きすると、それはなるべく避けてほしいとの事でした。

そこで
①お預かりした金で、できるだけ指輪の本体を作る(足らない部分は、少し補充する)。
②石を留める石座だけは、別の金で作ったものを使う
という事に決まりました。

まずは叩いて伸ばして作れるデザインの考案です。

ダイヤモンドの裂け目からダイヤモンドが覗くデザイン

ルビーを足したデザイン

なるべく、板にした金を丸めて指輪にできるデザインを考え・・・

決まったのがこちらでした。

実はこれ、私が今回描いた中でもかなり実験的な作品でした。
有機的なラインを、どこまでお客様と詰めることができるか。
そしてポップな形に、どうすれば高級感を出せるのか。
お客様をも巻き込んだ、長い制作が始まりました(笑)。

最初にした事は、ワックスでの見本作りです。
絵だけでは分からない裏の部分なども作って、お客様にお見せしました。

見本で作ったワックスの数々

本当はもっとありますが・・・(笑)。
実際に指にもはめていただいたりして、お好きな形を決めていただきます。

そして決まったのがこれでした。

指輪の下部についている斜めのラインは、ダイヤモンドのラインにします。

形が決まったところで、今度はお預かりしている金を溶かす番です。

細かく切った純金と銀と銅

この金は、純金だったので18金に作り直します。
純金は18金に比べると少し柔らかく、傷がつきやすいなどのデメリットがあります。
今回は指輪だったので、製品として安定している18金に作り直しました。

金を流し入れる型

あらかじめ、金を流し込む型をガンガンに温めておきます。

バーナーで火をあてる

金を溶かします。この炭素棒という棒でかき混ぜながら、できるだけ不純物が入らないように
均等に混ざるように、丁寧に溶かします。

溶かした金を型に流し込む

金は、バーナーからの火が停まると一瞬で固まってしまいます。
なので、型に流す直前まで、こうやってバーナーで温めながら流し込みます。

型の中で固まった金

無事に流れてくれました。
底の方に、少しはねたような金があって生々しい・・・。

新しくできた18金

これが新たにできた18金の棒です。
これを叩いて伸ばして叩いて伸ばして・・・を繰り返して板にします。

次は本体の形作り。
ワックスで作った指輪を元に、先ほど伸ばした金の板を形通りに切り取ります。

金を形どうりに切り取る

バラバラの指輪。これを1つ1つろう付けします。

ろう付けした直後の指輪です。ワックスの指輪と似てきました。

荒く磨いて、中心の大きなダイヤモンドを留める石座をつけました。
赤ペンで印が付いているのは、ここにダイヤモンドのラインが入るという印です。

ダイヤモンドのライン。
今回は、微妙に右肩上がりに配置したいので、慎重にラインを決めていきます。

ダイヤモンドのラインをろう付けして、磨いて石を全て留めてつや消しをして・・・・。
(本当はここが一番大変なのですが、少し割愛しています)

完成しました。

指輪全体のところどころに、ダイヤモンドを留めています。
シルクのような表面の加工が、ダイヤモンドの輝きを引き立てています。
当初心配していた高級感と有機的な形の共存も、うまく果たすことができました。

お客様と何度も打ち合わせをさせていただいた事は、作品質の向上に大きく繋がったと思います。
貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。

旦那様のお父様とお母様の思いをのせて
これからは、お二人の思い出をのせていっていただけたらと思います。