2019.01.15

こんな素敵なひのき舞台に立ちました

こんにちは。
2018年12月にご紹介した「誉ノ錺(ほまれノかざり)」のオーダー品
「柔らかな四角のマリッジリング」ですが。
実は結婚式にもお呼ばれして、参加させていただいておりました。

柔らかな四角のマリッジリングはこちらです。

ブライダル専門のカメラマンをなさっている奥様と
バーの経営をされている旦那様。
お二人とは長年の友人なのですが、マリッジリングを作らせていただくだけでも嬉しいのに
式にまで招待していただけるなんて感無量な気持ちです。

そして結婚式場は、奥様の勤めていらっしゃるチャペルでのお式でした。
チャペルの奥には、こんな美しいステンドグラスが!


花嫁さんのベールが、赤い絨毯に映えてとても綺麗です。


お互いに指輪を交換されて・・。


この笑顔!


お二人は本当に幸せそうで(旦那様はプラス照れ臭そうで(笑))
見ているこちらまで、幸せな気持ちになった素敵な結婚式でした。

そして、チャペルの地下に併設されている披露宴会場で、披露宴です。
ウェディングケーキのファーストバイトの、大きさに戸惑う新郎さん(笑)


そして新婦さんのご親友からの、歌の贈り物です。


彼女は、バンドのボーカルもされているので、圧倒的な歌唱力。
新婦さんを思う彼女の歌声と、暖かな歌詞の内容に、ジーンときてしまいました。

披露宴会場でお願いして、お二人の指輪の写真も撮らせていただきました。


この指輪は「柔らかな四角のマリッジリング」のページに詳しく書いている通り
片方はプラチナ、片方はシルバーでできています。

お客様の中には、お仕事上毎日は身につけられなかったり
着け外しの多いお仕事だったりと、様々な使い方があります。
今回はそんなお仕事上の問題を考慮して、旦那様の指輪はシルバーでお作りしました。

マリッジリングは一生ものです。
お二人がこれから歩まれる長い人生の中で、出来るだけ暮らしにも寄り添いたい。
そんな思いから出来上がったリングです。

この写真は、奥様の職場で一緒に働かれているカメラマンからの写真です。

やっぱりプロの写真は全然違いますね・・!!
一緒に写っている指輪は、ティファニー製の婚約指輪。
この指輪と重ね付けできるデザインが、お二人のご要望でした。

どうぞお二人とも末長くお幸せに。
心からおめでとうございます!

2018.12.31

2018年-年末のご挨拶

こんにちは。気がつけば12月31日ですね。
今年も沢山の作品を作らせていただきました。

「誉ノ錺(ほまれノかざり)」にくるオーダーは、他店で断られたものも多く。
1つ1つが難しいのですが、だからこそ出来上がった時はいつも、お客様以上に喜んでいます。

京都の東山に構えた店舗も、無事に丸2年を迎える事ができました。
来年で、この誉ノ錺(ほまれノかざり)を立ち上げて、丸10年になります。
一言で言えるとすれば「とにかく続けられて良かった」という事。

私達「誉ノ錺(ほまれノかざり)」のスタッフは、皆それぞれ作る事が大好きで。
こだわりも強くて大変ですが(笑)
そのこだわりこそが今まで続けられてきた要因の一つだと思います。

来年もこのメンバーでワイワイ言いながら
1つ1つ丁寧に、ものづくりを続けていきます。

今年も1年間、お世話になりありがとうございました。
皆様、どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。

※ご挨拶をしておりますが、引き続き年明けも予約優先でお店は開ける事が可能です。
 「休みの間に一度来て見たい!」
 「京都旅のついでに寄ろうかな」
などございましたら、どうぞお気軽にHPからお問い合わせくださいませ。
店主はずっと、店舗付近でうろうろしておりますので(笑)。

2018.09.02

オーダーメイドの里帰り

こんにちは。
随分以前にお作りした「カラーストーンのピンキーリング」「アクアマリンのリング」との二つが
お客様の手元から戻って来ました。
「少し汚れて来たので、リフレッシュ加工をしてほしい」との事です。


これが戻りたての指輪達。確かに、少し小キズが目立ちますね。


拡大してみると、石の裏にも汚れが付着しているのが見えます。

とはいえ、この二つの指輪。6〜7年も前にお作りしたものです。
その割には、状態がとても美しい・・・!
多少の小キズというものは、使っているとどうしてもついてしまうものですし
6〜7年お使いいただいている割には、石の裏も綺麗です。
きっと、大切に扱ってくださっていたのでしょうね。
作品が、全て「自分の子供」だと感じている私としては(笑)、本当にありがたい限りです。
新品のように、美しくしたいと思います!

まずは、洗って取れる汚れを全て取り除きます。
これは「超音波洗浄機」と呼ばれるもので、水を細かく振動させて付着した汚れを取り除くものです。
ここに、皮脂やその他の油分などを洗い流す特殊な洗剤を入れて使います。
うっかり自分の指をこの中に長く付けていると、ガサガサになります(笑)。


洗った後の石達です。
裏側の汚れが綺麗に取れて、輝きが増しました。


ただ、当たり前ですが小キズはまだ取れていません。
これからこの傷を磨いて取り除いていきます。

・・・・と思った矢先に問題が勃発。
職人が「カラーストーンのピンキーリング」を細かく点検している時に「ペリドットの石座の爪が浮いている」事に気付きました。

写真で分かるでしょうか?こんな感じで爪が石から浮いてしまっています。
ほっておくと石取れや爪が折れる原因にもなりますので、リフレッシュ加工の前に修理しておくことにします。

この灰色の固まりは「ヒートフォーム」と呼ばれるものです。
熱湯につけると柔らかくなる樹脂で、冷えると固まります。
柔らかい間に指輪を埋め込んで固定します。

こんな風にして、もう一度浮いてしまった爪を倒していきます。
小さいといえどもカナヅチで打ち直すとなると、力を入れ過ぎればペリドットは割れてしまいます。
このカナヅチの衝撃を少し弱めてくれるのも、ヒートフォームの大事な役割です。

アップで見るとこんな感じ。
本当に細かい作業です・・・。

爪が無事に倒せたので、ここから磨きに入っていきます。

高速回転しているバフに研磨剤を塗りつけて、そこに指輪を押し当てて小キズを取っていきます。
この時、石にはバフが当たらないように極力注意します。
そうしないと石のカット面まで削れてしまい、輝きが鈍くなってしまいます。


近くで見るとこんな感じ。
2本とも、丁寧にバフをあてていきます。

これがバフがけ直後の指輪達です。
全体的に黒ずんでいるでしょう?
磨いたバフの粉が付着している為です。

指輪の周りの水に、もやもやとした黒い湯気のようなものが見えないでしょうか?
これが、バフの粉です。
これを綺麗に洗って・・・。


これでリフレッシュ加工は終了です。
二つとも、とても綺麗になりました。

浮いていたペリドットの爪も、無事に押さえられました。

全体についていた小キズも取れています。

このコラムでも何度も書かせていただきましたが
ジュエリーという物は、大切に扱っていれば本当に長い間使っていただけます。
そして、石の裏にはどうしても皮脂が溜まりやすく
それを取り除くだけでもびっくりするくらい綺麗になります。
「最近この指輪、色あせてきたな」
「知らない間に傷だらけになってきたな」
など感じられた方は、ぜひ一度お買い求めになられたお店にご相談下さい。

最近のお店の中には「新品と取り返させていただきます」と提案してくるお店もあるようです。
新品と取り替えるのは、効率的には良いのかもしれませんが・・・。
「誉ノ錺(ほまれノかざり)」としては、それはもったいないように思います。

服を丁寧に繕い直して、長く着るように
割れたお茶碗に「金継ぎ」をして、もう一度使うように

ジュエリーも、末長くお客様の元で可愛がっていただきたいと思います。
「誉ノ錺(ほまれノかざり)」では、他のお店の商品達のリフレッシュ加工も承っております。
どうぞ、ジュエリーで何かお困りの事があれば、お気軽にお問い合わせくださいね。

2018.05.09

Van Clef & Arpels「アルハンブラ」のリメイク

こんにちは。
今日は、面白いお仕事をさせていただいたので、そのお話をしたいと思います。

これはオーダーでも修理でもないな・・・と思い。
「リメイク」という言葉を使わせていただきました。

これが、かの有名なVan Clef & Arpels「アルハンブラ」シリーズのイヤリングです。
(画像はVan Clef & Arpelsホームページからお借りしました)
とても高価なものなのですね・・・。お恥ずかしながら初めてお値段を知りました(笑)。

そしてこれが、お客様の持ち込まれたイヤリングの片割れです。

裏側も、イヤリング使用になっています。
お客様は「このイヤリングを、指輪として使いたい」との事でした。

普通の作り方としては

1,後ろのイヤリングパーツを取る
2,新たに作った金の指輪を、ろう付けで取り付ける

で完成!・・のはずなのですが。
実はこのイヤリングには、その作り方が使えません。

というのも、この白蝶貝でできたお花型の部分。
これは薄い貝で出来ています。
この薄い貝がとても熱に弱くて、ろう付け(溶接のようなもの)には耐えられないのです。
じゃあ、留めている爪の部分をおこして中の白蝶貝を取り出して・・・という方法もあるのですが。
爪を起こしている時に、白蝶貝に力がかかって割れてしまうかもしれません。

そこで今回は「レーザー」という方法をとらせていただきました。
レーザーは、全体に熱をを通して行う「ろう付け」とは異なり
1点集中でロウを溶かして溶接のできる機械です。
残念ながら、「誉ノ錺(ほまれノかざり)」にレーザーの機械はないので(とても高額!!)
今回は、業者さんにお願いしました。

パーツを作って、イヤリングの裏部分を取って綺麗に整えて・・・。
そして出来上がったのがこちらです。

このイヤリングは、裏の部分にとても美しい細工をしてあったので、できるだけ残しました。

2本の唐草と、支えの柱を1本付けています。

アルハンブラ特有のミル打ちを指輪全体にも施して、デザインに共通点をもたせました。
Van Clef & Arpels「アルハンブラ」シリーズにも指輪はあるのですが
あえてデザインは似せていません。
「誉ノ錺(ほまれノかざり)」が一番美しいと思うデザインで
アルハンブラをリメイクさせていただきました。

色々なお仕事をさせていただいていますが、こういったブランド品のリメイクは初めてです。
イヤリングの裏側にまで、気持ちのこもったデザインが施されていて
ここは潰さず生かしたいなと思う箇所がありました。

丁寧に作られたものを見ると、こちらまで嬉しくなりますね!
お客様にも大変喜んでいただけて、良かったです。

2018.02.11

ダイヤモンドとゴールドのエンゲージリング

こんにちは。
久しぶりのコラムになってしまいました。

写真は、以前にお作りしたエンゲージリングです。
このリングは、お客様のご要望により、とても個性的なものになりました。
今日はそのお話です。

お客様からのご要望。
それは「旦那様の親御さんの持ち物であった、金の指輪を溶かしてエンゲージに使いたい」
というものでした。

お客様からお預かりした指輪

これがその指輪です。
よく見ると、白い花のような箇所が・・・。
新品の頃は、彫りと別の貴金属でお花をかたどっていたのでしょう。
今ではあまり見ない作り方です。

そして、これは24金でした。「純金」です。
お客様は、これを溶かして指輪の一部にされたいとの事でした。

「溶かして作る」
これは、簡単そうに聞こえて実は複雑です。
指輪の作り方には、大きく分けると(本当に大きくですが)2つあります。
1つは、金やプラチナを叩いたり伸ばしたり、ろう付け(溶接のようなものです)して作る方法。
もう一つは「鋳造」という方法です。

「鋳造」の詳しい説明は、また別の機会にするとして
今回の「溶かして作る」に、この鋳造は当てはめられませんでした。
というのも、鋳造の場合5グラムの指輪を作る時、5グラムの金では作れません。
もっと沢山の金が必要となり、結果、お預かりした金と別の金が混ざってしまうことになるのです。
お客様にお聞きすると、それはなるべく避けてほしいとの事でした。

そこで
①お預かりした金で、できるだけ指輪の本体を作る(足らない部分は、少し補充する)。
②石を留める石座だけは、別の金で作ったものを使う
という事に決まりました。

まずは叩いて伸ばして作れるデザインの考案です。

ダイヤモンドの裂け目からダイヤモンドが覗くデザイン

ルビーを足したデザイン

なるべく、板にした金を丸めて指輪にできるデザインを考え・・・

決まったのがこちらでした。

実はこれ、私が今回描いた中でもかなり実験的な作品でした。
有機的なラインを、どこまでお客様と詰めることができるか。
そしてポップな形に、どうすれば高級感を出せるのか。
お客様をも巻き込んだ、長い制作が始まりました(笑)。

最初にした事は、ワックスでの見本作りです。
絵だけでは分からない裏の部分なども作って、お客様にお見せしました。

見本で作ったワックスの数々

本当はもっとありますが・・・(笑)。
実際に指にもはめていただいたりして、お好きな形を決めていただきます。

そして決まったのがこれでした。

指輪の下部についている斜めのラインは、ダイヤモンドのラインにします。

形が決まったところで、今度はお預かりしている金を溶かす番です。

細かく切った純金と銀と銅

この金は、純金だったので18金に作り直します。
純金は18金に比べると少し柔らかく、傷がつきやすいなどのデメリットがあります。
今回は指輪だったので、製品として安定している18金に作り直しました。

金を流し入れる型

あらかじめ、金を流し込む型をガンガンに温めておきます。

バーナーで火をあてる

金を溶かします。この炭素棒という棒でかき混ぜながら、できるだけ不純物が入らないように
均等に混ざるように、丁寧に溶かします。

溶かした金を型に流し込む

金は、バーナーからの火が停まると一瞬で固まってしまいます。
なので、型に流す直前まで、こうやってバーナーで温めながら流し込みます。

型の中で固まった金

無事に流れてくれました。
底の方に、少しはねたような金があって生々しい・・・。

新しくできた18金

これが新たにできた18金の棒です。
これを叩いて伸ばして叩いて伸ばして・・・を繰り返して板にします。

次は本体の形作り。
ワックスで作った指輪を元に、先ほど伸ばした金の板を形通りに切り取ります。

金を形どうりに切り取る

バラバラの指輪。これを1つ1つろう付けします。

ろう付けした直後の指輪です。ワックスの指輪と似てきました。

荒く磨いて、中心の大きなダイヤモンドを留める石座をつけました。
赤ペンで印が付いているのは、ここにダイヤモンドのラインが入るという印です。

ダイヤモンドのライン。
今回は、微妙に右肩上がりに配置したいので、慎重にラインを決めていきます。

ダイヤモンドのラインをろう付けして、磨いて石を全て留めてつや消しをして・・・・。
(本当はここが一番大変なのですが、少し割愛しています)

完成しました。

指輪全体のところどころに、ダイヤモンドを留めています。
シルクのような表面の加工が、ダイヤモンドの輝きを引き立てています。
当初心配していた高級感と有機的な形の共存も、うまく果たすことができました。

お客様と何度も打ち合わせをさせていただいた事は、作品質の向上に大きく繋がったと思います。
貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。

旦那様のお父様とお母様の思いをのせて
これからは、お二人の思い出をのせていっていただけたらと思います。

2017.10.31

誕生石シリーズ ー10月「オパール」ー

こんにちは。
今日は10月の誕生石「オパール」のお話です。

オパールの和名は「蛋白石(たんぱくせき)」と言います。
オパールはギリシア、ローマ時代に上層階級で特に愛されていた宝石でした。
当時はサンスクリット語で「upala(ウパラ)」と呼ばれていました。
これは「最上の宝石」という意味です。

当時の人達は、オパールがなぜ七色にキラキラと光るか解明できていませんでした。
そこでオパールの中に、赤・黄色・紫・青色など
様々な小さな宝石の粒が詰まっている特別な石だと考えられていたようです。
なるほど。それなら「ウパラ」と呼んでしまうのもうなづけますね。
私もそんな石があるなら欲しいです(笑)。

オパールが七色に美しく光るのは、この鉱物の持つ、独特な構造のためです。
「珪酸」という、見えないぐらいの小さな球が無数に集まっていて
それが三次元的に整然と積み重なると、光がその球の隙間を通過する時に
虹色に分かれて光ります。
球のサイズがばらばらだったり、積み重なり方が乱れていると光りません。
この七色の光がキラキラと光る様を「遊色効果」と言います。

遊色効果の美しいホワイトオパール

これがおなじみのオパール。
白の中に、様々な色が浮かびあがっています。

青と緑色の遊色効果

これはブラックオパールです。
青と緑の光が印象的ですね。

オレンジオパール

これはオレンジ色のオパール。 暖かい色味です。

そしてオパールの中には、七色に光らないものもあります。
光らないオパール全般は、「コモンオパール」と呼ばれていますが
遊色効果を持つ石よりは、宝石として扱われることは少ないようです。
個人的には美しい色のコモンオパールが沢山あるので、それはそれでとても好きなのですが。
市場価値は定まらないといったところでしょうか。

コモンオパールのオレンジ
コモンオパールのピンク
コモンオパールのイエロー
コモンオパールの緑

オパールには、合成石が多いことでも有名です。
中でも有名なのは、京セラが作った「京都オパール」です。
京セラには、進んだ宝石合成技術部門があり、こんな美しいものもできてしまいます。

合成オパールの色見本

※この画像は、京セラさんのサイトから引用させていただきました。

この技術のおかげで、遊色効果のある合成オパールを、安価で色々な製品に
組み込んだりも出来るようになりました。
今の時代、宝石も時間をかければ作れてしまうのです。
科学の進歩って、本当に凄まじいですね・・・。

さてオパールのお手入れ方法なのですが。
実は、オパールには様々な種類があります。
そして産出国やその種類によって、乾燥に弱かったり、水分を吸収して変色したりします。
一番良いのは、ご購入されたお店に持ち込むことですが
鑑別をとってみることもお勧めします。

天然のブラックオパールなどは、柔らかい布で拭いてもらっても構いません。
オーストラリア産のホワイトオパールは、ブラックオパールなどよりは水を
多めに含んでいますので、夏場の直射日光下や熱が極端にこもったり
乾燥がきついような場所には、長時間置かないでください。
あとは、柔らかい布で拭いたり水で優しく洗ってもらっても問題ありません。
ただし、超音波洗浄機は避けて下さいね。
オパールは「宝石」としてもですが「鉱物」として愛されている方達も多いです。
それは、一言で「オパール」と言っても、性質の全く違う石が多いという事です。
これを機会に、お持ちのオパールの素性を調べて見られるのも面白いのではないでしょうか?

※写真は「アサオ工芸」様より引用させていただきました。

2017.09.29

誕生石シリーズ ー9月「サファイア」ー

こんにちは。
今日は9月の誕生石「サファイア」のお話です。

サファイアの和名は「青玉(せいぎょく)」と言います。
7月の誕生石「紅玉」と対になるような名前です。
誕生石シリーズ ー7月「ルビー」ーでお話ししたように
ルビーとサファイアは同じ鉱物です。
鉱物の中に含まれている成分が少し違うだけで、こんなにも色が違うなんて
自然の力は計り知れませんね。

古代のペルシアでは、人間が住む大地はサファイアで出来ていて
大地に反射した太陽の光が、空の青さを作り出していると考えられていました。
すごい想像力です(笑)。
「サファイア」の語源は「青」を意味するラテン語の「sapphirus(サッピールス)」
ですがこの言葉は、以前ラピスラズリも指す言葉として用いられていたようです。

そんな「青色」を代表しているかのように扱われているサファイアですが
実は、様々な色のサファイアが存在しています。

そもそも「コランダム」という同じ鉱物であるサファイアとルビー。
「青」と「赤」という両極端の色を持つ鉱物ですから、多種多様な色があるのも頷ける話です。

ブルーサファイア

これは同じみのブルーサファイアです。
底の底までのぞき込めるような深い青色は、サファイアならではの美しさです。

オレンジサファイア

これはオレンジサファイア。緋色にも近いような不思議な色です。

グリーンサファイア

これはグリーンサファイアです。
この石は、少しだけ黄色が混じっている希少な石です。

パープルサファイア

これはパープルサファイア。紫色がアメジストのように濃いですが
反射光が鮮やかなのはさすがです。

ピンクサファイア

これはピンクサファイアです。パープルサファイアとはまた異なる明るいピンク色です。

ブラックスターサファイア

これはブラックスターサファイアです。石の表面にくっきりとスターが現れています。
男性用のジュエリーなどに使用すると、独特の華やかさを演出してくれるのではないでしょうか。

パパラチアサファイア

そしてこれが、パパラチアサファイアと呼ばれるものです。

サファイアの色には、特別希少とされている色が2種類あります。
1つは「コーンフラワー・ブルー(矢車菊の青)」と呼ばれる青色。
そしてもう1つは「パパラチア・ピンク(蓮の花のピンク)」と呼ばれるピンク色なのです。

上のピンクサファイアと比べて見てください。
ピンク色でもない、オレンジ色でもない、とても複雑な色味ですね。
「蓮の花」という表現がぴったりな気がします。
そんなパパラチアサファイアは、希少性が高く、大きな原石がなかなか産出されないことから
世界で最も高価なジェムストーンの1つともされています。
石好きの私としては、死ぬまでにひとつは欲しいなと思ってしまいます(笑)。

さて、サファイアのお手入れ方法ですが
ダイヤモンドの次に硬いこの石は、比較的お手入れが簡単です。
超音波洗浄にも耐えられるので、汚れてしまったら
購入されたお店にお持ちいただくのも良いかもしれません。

ご家庭でなら、泡立てた石けんの泡で包み
歯ブラシなどで優しく擦っていただくと汚れが浮き上がってきますので
よく水洗いして乾かせば、美しい輝きを取り戻してくれます。

ただ1つだけ気をつけていただきたいのは
目に見えるようなヒビや傷がある場合は、超音波洗浄や歯ブラシなどは避けて下さい。
どんな小さな衝撃でも、そのヒビが広がり割れてしまうとも限りませんので。

サファイアとマンダリンガーネットの指輪

写真は、「誉ノ錺(ほまれノかざり)」の作品
「サファイアとマンダリンガーネットの指輪」です。
中心の青い石も、その上下の黄色い石も、左右の薄い青色の石も、すべてサファイアを使用しています。

サファイアの青色を見ていると、何となく心がすっと落ち着くような気がします。
秋の夜長の、落ち着いた時間にぴったりな、美しい澄んだ青色です。

※写真の一部は「アサオ工芸」様より引用させていただきました。

2017.09.27

マリッジリングの修理とサイズ直し(女性用マリッジリング)

こんにちは。
今回は、前回コラムに書かせていただいた
「マリッジリングの修理とサイズ直し(男性用マリッジリング)」
の、女性バージョンのお話です。

修理をする前の指輪

これが、お客様の指にはまっていた指輪です。
拡大してみると、不思議なダイヤモンドの留め方・・(埋まり方?)
(珍しいデザインだなあ)と内心思いながら、サイズ直しを始めました。

以前にサイズ直しされた箇所を取り除く

こちらも、一度サイズ直しをされた箇所があったので、その部分を一旦取り除きます。

指輪に新たなプラチナをはめ込む

新しいプラチナの破片を、挟み込みます。
元々の指輪の断面と、破片の断面ができるだけぴったりくっつくように
ヤスリなどで調整します。

溶けたロウが切断面に流れ込んでいる

ロウ付けした後の写真です。
プラチナの破片の上にも、溶けた金属がのっているのが見えると思います。
指輪本体とプラチナが、これでぴっちりとついてくれました。
「ロウ付け」の詳しいお話は
「マリッジリングの修理とサイズ直し(男性用マリッジリング)」
を、どうぞご参照ください。

粗めのヤスリで、形を整える

余分な金属を、粗めのヤスリで削り落としたところです。

細かい研磨剤で磨いた指輪

細かい研磨剤をつけて、全体も含めて磨き上げました。
これでサイズ直しは無事に終わりです。

ここで、新たな事実が発覚しました。
コラムの冒頭で(珍しいデザインだなあ・・)と感じていたこの指輪。
職人に見せたところ
「元々は彫り留めで留めてあったものが、すり減っている」
ということが分かったのです。

彼曰く
「ダイヤモンドが留まっている左あたりに、小さなミルうちの跡らしきものが見えるから」
とのこと。
「ミル打ち」というのは
「マリッジリングの修理とサイズ直し(男性用マリッジリング)」
にも登場しましたが、小さな丸いつぶつぶが連なっているようなデザインです。

正直、ここまで聞いてもなかなかピンとこなかった私(笑)。
職人さんの長年の勘を信じて、彫り留めを再現してもらうことにしました。

ダイヤモンドを指輪から外す

まずは、埋まっていたダイヤモンドを取り出します。
この指輪は裏がぬいてあって、少し薄い金属の上に石が留まっていました。
上からほじくり出すと、金属がさらに薄くなってしまい、破れてしまう可能性があります。
そこで、今回は、後ろからダイヤモンドを押し出しました。

固定してタガネで彫っていく

「マリッジリングの修理とサイズ直し(男性用マリッジリング)」
でもやっていたように、固定してタガネで彫りを再現していきます。

3つのダイヤモンドが留まったところ

石を3つ無事に留められたところ。
確かに!ここまで再現してもらうと、元々のデザインが見えてきます。
かなり長い時間をかけて、すり減ったのでしょうね。
職人に指摘してもらわなければ、普通に磨いて終わるところでした(笑)。
「長年の経験」には完全に脱帽です。

最終磨きをして仕上げる

仕上げの磨きをしたところです。これで完成です。

真円も綺麗に出すことができました。

新品はきっとこんな感じだったのでしょうね。

二つの指輪の修理を無事終わらせてお客様に納品した後、こんな嬉しいメールをいただきました。


「35年間という年月を経て経年変化を起こし
かなり窮屈になってしまった指輪たち。

サイズ直しをお願いしたはずのすっかりすり減っていた指輪たちが
キラキラと輝きを取り戻し、新品のようになって戻ってきて感激です。

嬉しくて、お揃いのケースに収まった指輪で
夫と35年目の指輪交換もどきをして遊びました。
サイズもピッタリでした。

心を込めて直してくださった指輪を
これからもずっと大切に身につけていきます。
そしてさりげなく指輪に目をやっては幸せな気持ちになると思います。

本当にありがとうございました。」


ありがたいお言葉です・・・。
そして、本当に幸せな指輪達です。

プラチナやダイヤモンドの商品は、適切な修理や加工をすれば
このように、ほぼ新品に生まれ変わらせることができます。
「デザインは気に入ってるけど、だいぶ汚いし・・・」
というものは、是非一度近くの宝石店さんなどに持って行ってみてください。
もちろん「誉ノ錺(ほまれノかざり)」でも、随時受け付けております。
ご相談だけでも大歓迎です。

「誉ノ錺(ほまれノかざり)」の作品も、これだけ長い間大事にしてもらえるような
唯一無二の作品を作り続けていきたいと思いました。
H様、素敵なお仕事をさせていただき本当にありがとうございました!

※このコラムは「マリッジリングの修理とサイズ直し(男性用マリッジリング)」
と対になっています。
どうぞ合わせてお読みください。

2017.09.20

マリッジリングの修理とサイズ直し(男性用マリッジリング)

こんにちは。
この前、あるお客様からマリッジリングのサイズ直しをオーダーいただきました。

それはお客様の旦那様のもので、形も少し歪み、傷も入っていました。
ふとお客様の手を見ると、お客様のマリッジリングも少しおつかれ気味・・・。
よくよくお聞きすると、サイズ直しは今までもしたことはあるが
直しながらも、35年間お使いいただいていたとのこと!!
なんて幸せな指輪達でしょうか(笑)。

そこで今回は、コラムを「男性用マリッジリング」と「女性用マリッジリング」に分けて
修理とサイズ直しの過程をご紹介していきたいと思います。
今回は、「男性用マリッジリング」の修理とサイズ直しです。

修理する前の指輪

アップで見てみると、全体に施してあった上下のミル打ちが消えかかっている箇所があります。
斜めに入った線模様も、ややバラついていますね。
ここが以前にサイズ直しをした箇所かも知れません。

火で全体を温める

プラチナは少し火であぶると、サイズ直しのために溶接(ロウ付けと言います)した箇所が
浮き上がってきます。
写真は、火であぶって浮き上がらせた部分。
よく見ると、後から足した箇所にヒビも入っています。

以前にはめ込まれていたプラチナを外す

まずはバーナーで温めて全体に火を回し、温度を上げて、後から足した金属を取り外します。

新しいプラチナをはめ込む

指輪の断面に合わせた、新たなプラチナの破片をはめ込みます。

ロウ付けをする

これが「ロウ付け」と呼ばれている貴金属での溶接の仕方です。
先ほどはめ込んだプラチナの破片と、指輪の間に
「ロウ」という融点の低い金属の破片を置いて、火で溶かします。

ロウが指輪とプラチナの隙間を埋めている

指輪と破片の間に、金属が流れ込んでいるのがわかりますか?
これでロウ付けは終了です。
ここから形を整えていきます。

粗いヤスリで形を整える

粗い目のヤスリで、大まかに形を整えたところです。

軽く全体を磨かれた指輪

細かい研磨剤で磨いたところ。
ここから、今度は指輪についていた模様を再現していきたいと思います。

指輪を固定して、模様を再現する

このように固定して、タガネというものを使って再現していきます。
「タガネ」は、金属を彫ったり模様をつけたりするのに使うものです。
写真のように手で押し付けたり、小さなハンマーで叩いたりもします。
この工程が終わったら、最後の仕上げの磨きに入ります。

模様が再現された指輪

完成です。
上下のミル打ち、斜めの線も、綺麗に再現することができました。

真円に戻った指輪

少し歪んでいた円も真円に戻りましたし、傷もありません。

プラチナの製品を修理していていつも思うのは、本当に長く使えるなあと言うこと。
やはり修理をしやすいという事が大きな理由の一つだと思います。
プラチナがマリッジリングに使われているのも、納得ですね。

このコラムは「マリッジリングの修理とサイズ直し(女性用マリッジリング)」に続きます。