2021.05.04

かんざし -鶴と華ー/

こんにちは。
コラムが長い間滞ってましたね。
今日は、前回紹介させていただいた「かんざしー鶴と華ー」について 少しお話ししたいと思います。

実は、今回の「かんざしー鶴と華ー」の原型を作ったのは、去年の緊急事態宣言の最中でした。

コンスタントに続いていたお客様が途絶え
追われるように仕事をしていた状況から、ストンと抜けたような感じの中
「今まで、作りたかったけど作れなかった、凝った物を製作してみよう」
と思い立ちました。

デザイン画を描いて
ワックスを削りました。

ちまちまと、外出自粛・店舗完全予約制の中ずっと彫っていた事を思い出します。
ワックスが何とか仕上がって、でも自分が思っていた感じではなくて。
その時、職人さんが
「原型にする時に胴体と羽を切り離せばいい。そして金属になった時にまたくっつければいい。
そうすれば、鶴にもっと動きが出るよ。」
と助言をくれました。

私自身では、そんな芸当はとても出来ないので渋っていたのですが
サクサクと胴体と羽を切り離され(笑)、原型になり、銀になったものを
「結構難しいなあ(私の心の声:いやほんまに難しいですよ)」と言いながら
造作もなくくっつけてくれた職人さんの技術を見た時に
私の表現は、自分1人では絶対に完成しないのだと思いました。

この鶴は、日本に古来からある「家紋」の「鶴」からインスパイアされた形になっています。
「鶴」は「延命長寿」を表すシンボルで、昔から日本で親しまれていた形です。

家紋の「鶴」

そして、鶴の下にぶら下げた「華真珠」
これは、ずっと前にコラムでも詳しく書きましたので、よければご覧下さい。
↓↓↓↓↓↓
「華真珠について」

こちらも、日本の職人さんが技術と熟考を重ねて生み出された逸品です。
最近は、類似品もちらほら見かけるようになりましたが
私は、この「華真珠」というブランドを立ち上げられた「小松ダイヤモンド工業所」さんから
ずっと買い付けていきたいと思います。

発表から、1年経ってしまった作品ですが
この鬱々とした雰囲気の時代に、少しでも安らぎを与えてくれれば、こんな嬉しい事はありません。

2021.03.03

大切な友達が運んでくれた「小さな絵の展覧会」シリーズ/

こんにちは。
今日は、前回発表しました「小さな絵の展覧会」シリーズについて
少しお話をしたいと思います。

先日、「誉ノ錺(ほまれノかざり)」から出た新作
「小さな絵の展覧会」シリーズ「庭園の午睡(ひるね)」
これは、元々は私がひねり出した案ではありませんでした。

私には大切なお友達がいます。
「KAKERA KNIT(カケラニット)」というニット商品の
デザイン・製作をされているタカさん。

今は新潟を本拠地にされているのですが
ふらっと京都に現れては、新潟の新米を私の家の前に置いていったり
おかきの袋をくれたり(笑)。
正に風のような人なのです。

そんな彼が、世界中を巡って受けたインスピレーションから紡ぎ出すニットの数々が
本当に美しい色合いばかりで。
私はずっと、彼の感性の鋭さと、感受性の豊かさに憧れていました。

その日もふらりとお店に現れたタカさん。


「誉ノ錺(ほまれノかざり)」では、お店でこんな風に石達を飾っているのですが
彼はそれを、興味深げに眺めてこう仰いました。
「どれも綺麗やなあ。小さい絵の展覧会みたいにして並べたらええのに」と。

それが「小さな絵の展覧会」シリーズの始まりでした。
「タカさん。その考えちょうだい!」と叫んだ事を、今もよく覚えています(笑)。

ずっと、私を魅了して来た宝物のような石達。
でもそのままの美しさだけでは物足りず
石達を、もっと引き立てるようなデザインにしたいと考えていたのですが
明確な答えは出せずにいました。

タカさんの言葉で、石達の模様を更に引き立てる「額縁」を作ろうと思い付きました。

このシリーズは、基本、石は全て一点ものです。
今回の石は「苔入り水晶」という石ですが
これからも不思議な絵のような石達を、沢山紹介していけたらと思います。

お買い上げいただいたお客様には、それぞれの石の大きさに合わせて制作した
小さなイーゼルも、一緒にプレゼントさせていただきます。

そのまま眺めて楽しんで頂いても良いですし
指輪やネックレス、ブレスレットやブローチなどへの加工も承らせていただきます。

石を引き立てながらも、でしゃばりすぎないデザインを考えるのはなかなか難しい事です。
でも、石を引き立てられる新しいデザインの在り方を、自分なりに探ってみたいと思います。

これからも「小さな絵の展覧会」シリーズをよろしくお願いいたします。

そしてタカさん、また会った時に素敵な旅の話を聞かせてね。
いつも楽しませてくれてありがとう。

2021.02.18

「DESIGN WEEK KYOTO 京烏」に参加させていただきます/

こんにちは。
寒くなったり暑くなったりややこしい季節ですね。

今日は、久しぶりのイベントのお知らせです。

「誉ノ錺(ほまれノかざり)」のある京都では、毎年面白いイベントが開催されています。
その名も「DESIGN WEEK KYOTO」
京都の企業や職人さん達が、その期間中、アトリエや工房を解放して
それぞれのお仕事を一般の方に知ってもらうイベントです。

「DESIGN WEEK KYOTO」のHPはコチラです→「DESIGN WEEK KYOTO」

今回「誉ノ錺(ほまれノかざり)」は、松原通にある
「京都金物卸し 河長」さんからお誘いを受けて
「レンタルギャラリースペース 京烏」で出張ジュエリー相談をさせて頂く事になりました。

「DESIGN WEEK KYOTO 京烏」の詳しい内容はコチラ→「京烏合同展」

私の在廊日は
2月23日 12時〜17時まで
2月27日 12時〜16時まで
です。

サイズ直しや新品加工のご相談、その他リフォームなど
ジュエリーに関する事なら何でも、ご相談を承りたいと思います。
秘蔵の石達もこっそり連れて行こうかなと目論んでいます(笑)。

そして、京烏ではこの期間、松原通やその近辺で活動されている職人さん達が
制作している物を展示しています。
さらに私が在廊している日には、出張のコーヒー販売も行われるそうです。
よかったら、お散歩がてらに遊びに来て頂けると嬉しいです。

また「DESIGN WEEK KYOTO」の、もう1つの目的として
「なかなか日頃は会えない、職人さん同士の交流を深める。」
というものがあります。

・ジュエリー職人とはどういった仕事なのか
・どんな工具を作っているのか
・オーダーメイドの流れ
など、何でもお答えさせていただきますので、興味のある職人さん達は
在廊中会いに来てもらえたら嬉しいです!

また、来週はこのイベント参加に伴って「誉ノ錺(ほまれノかざり)」の店舗は
ご予約優先とさせていただきます。

「レンタルギャラリースペース 京烏」アクセス→

皆様にお会いできる事、心から楽しみにしています。

2021.02.02

難しいフルエタニティリングの修理/

こんにちは!
今日はとても難しいフルエタニティリングのサイズ直しをご紹介したいと思います。

いつも思うのは「修理は作りを熟知していないとできない」という事です。
今回もとても難しいお修理で、例えば、私がこの修理の流れを知ったからと言って
出来るわけではありません。
職人さんが長年培われた技術と勘に感謝しながら、紹介していきたいと思います。


お預かりしたのは、この指輪。
某有名ブランドのフルエタニティリングです。
「フルエタニティリング」とは、一周ぐるりと石が留まっている指輪の事。
ご購入されたブランドでは「サイズ直しが出来ない」とお断りされたそうです。

2回ほどしか使っていないのに、サイズが合わなくなってしまったとお困りのご様子。
どうしても使いたいとのご要望でしたので、お受けすることにしました。



ぎっしりと石が留まっていますね。
側面も、つるんとした平坦な形ではなく凹凸があります。
石の裏側も、綺麗な四角に成形されていました。

素材はホワイトゴールドにダイヤモンドです。
サイズを2号大きくします。
サイズ直しの流れとしてはいつもと変わりません。

・糸のこを入れる箇所のダイヤモンドを外して
・糸のこで切って、地金を挟んでろう付けして
・形を整えた後に、ダイヤを留め直す

この工程全てに、今回は細心の注意を払います。


まずは、すり板の形をこのように削りました。
今回の修理用のすり板です。
石を外すにしても、糸のこで切るにしても、出来るだけブレを減らさないといけないのです。
切り口がぶれたり、石外しの時に指輪が動いたりすると後の作業に大きな負担がかかってきます。


こんな感じで配置します。


石を3粒ずつ外しました。
なぜ3粒外したかは、後からの工程で分かります。


糸のこで、空いた石座のど真ん中を切断しました。
見てるだけで恐ろしいです(笑)。


次に、切り離した指輪のサイズを、少しずつ広げていきます。
全体をゴム槌で軽く軽く叩きます。
急に広げると、石が割れたり指輪にひびが入ったりします。
ゆっくりゆっくり叩いていきます。


無事に、欲しいサイズまで広げられました。


このように地金を挟み


ろう付けをしました。


ロウがしっかりまわっているのが見えると思います。

ろう付けとは、ご存知の通り火をあてる事です。
もちろんダイヤモンドを痛めるリスクがあるので、石を最初から多めに外しました。
火がもろにあたる石は、出来るだけ減らさなければならないからです。

それでもリスクゼロという訳にはいきません。
出来るだけ早く火を通して、ロウが溶けた瞬時に火を指輪から離す。
この時に、指輪の切り口がガタガタだと、ろう付けもスムーズにはいきません。
今回は、全ての行程を手早く綺麗にしないといけないのです。


指輪に挟んだ地金を、ヤスリで成形していきます。


様々なヤスリで、形を整えて・・・


綺麗に指輪に馴染んでくれました。


次に石座を作っていきます。
今回は、ダイヤモンド2個分広がったので、アタリの穴を空けます。


ここからは、細かい作業になるので、顕微鏡の出番です。


アタリで付けた穴を大きく広げて・・・


溝を作って、周りの彫り留めと同じ石座を成形します。


裏側も、周りと同じような四角に成形します。
本当に顕微鏡さまさまですね(笑)。


石が留まりました。


指にはめてみました。
まだメッキをしていないので、地金の色が分かれていますね。
最後に仕上げ磨きをします。


メッキをかけて完成です!


指輪の中で一箇所だけ横長な六角形ができましたが、それ以外は見ても分からないと思います。

お客様には大変喜んでいただき、私達もほっとしました。

ブランドにもよると思うのですが
ブランド品は、元のブランド以外の業者で手を入れた場合
そのブランドとして買い取ってもらえなくなったり
元のブランドが修理してくれなくなったりする事があります。
ブランド品の修理をお考えの方は、その旨をご了承の上頼まれた方が良いと思います。

一番良いのは、販売したブランドが責任を持って、メンテナンスをする事だと思うのですが。
大きなブランドになると、そこまで手が回らないのでしょうか。

これからも、お客様が困った時の受け皿のようなブランドでありたいと思います。

2021.01.17

エンゲージリングと仲良しなお客様/

こんにちは!
年明け最初のご紹介は、「エメラルドとダイヤモンドのエンゲージリング」です。

このお客様は、旦那様と2人でご来店下さいました。
「色々とエンゲージリングを見てみたけれど、いまいちピンと来ない。」との事。
確かに最近販売されている中で「エンゲージリング」と括ってしまうと
デザインは限られてしまう事が多いようですね。

個人的には、せっかく一生に一度の事なのだから、思いっきり自分好みのものを
見つけた方が良いと思うのですが。
大手は冒険したデザインを販売したがらないのでしょうね。

そんな自分好みの指輪を見つけたいお客様。
こちらもぐっと気合を入れて、お客様の好みを探ります。

お客様の好きな色、形。
逆に嫌いな色、形、モチーフなどなど。
お話を進めていくと、少しずつですがお客様の欲しい形が見えてきます。
一旦お時間をいただいて、2週間後にまたご来店いただきました。

何点かのデザイン画を見てもらい・・・
「わあ!どのデザインにしようか迷うー!!!」
と、無事に仰っていただけました。デザイナー冥利に尽きますね・・。
この瞬間は、本当に腰が抜けるぐらい嬉しいです(笑)。

今回のお客様は、濃いめの緑がお好きだと言う事で、エメラルドを使用。
ハートやリボンなどの、いわゆる「甘め」な形は好きではないという事だったので
石に四角を使ったり、ひし形でデザインの中心を構成したりしてみました。

そしてこちらが完成品の写真達です。

完成品は、幾何学模様のようで、でもアンティークのような暖かみもある指輪に仕上がってくれたと思います。
詳しくは、ぜひコチラからご覧ください→「エメラルドとダイヤモンドのエンゲージリング」

そして、今回すごく感じたのは、お二人の仲睦まじさ。

途中で、一度お客様お一人でご来店されたのですが
お話の端々に、旦那様の存在が感じられて。
旦那様はいらっしゃらないのに、まるで一緒にご来店されているような気持ちになりました。

完成した指輪を取りに来られた時も、もちろんご一緒に。
指輪をはめて、嬉しそうな奥様を見つめる、嬉しそうな旦那様。
そして幸せそうなお二人のこの笑顔!!

良いですねえ・・・心が嬉しくてぎゅっとなりました(笑)。

最近は何かとギスギスした話題が多いですが
みんな、もっと仲良しである事にパワーを注いだ方が良いと思います。

ずっとお二人の側で、この指輪が思い出を紡いでくれますように。

2020.12.30

2020年を無事に終えられそうです。/

皆様本当にお疲れ様でした。
2020年は、みんなが少しずつ我慢をしていた年だったと思います。

様々な理不尽や憤りは山ほどありましたね。
国はあてにならないなと、自分達でやるしかないのだと思い知らされた1年でした。
今はそんな事思い出しても胸糞が悪いだけですね(笑)。

私は18歳の頃から、うすぼんやりと
「ものづくりをして生きていきたい」と思っていた人間でして。
何とかかんとか続けてきましたが、今年ばかりはハラハラしました(笑)。

ものを作ると言う事の必要性と不必要性を、ずっと天秤にかけて感じていた1年だったと思います。
そんな中でも、お互いに励まし合って、今回の看板写真になっている機械で
ドロドロになりながら商品を磨き続けてくれた
「誉ノ錺(ほまれノかざり)」の職人達には感謝の気持ちしかありません。
彼らのおかげで、新作をいくつか完成させる事ができました。

来年も、状況が急に好転する事はないでしょう。
そんな濁流のような時代でも、自分の足元をすくわれる事がないように
私は、地に足をしっかりとつけて制作をしていきたいと思います。

こんな時期にオーダーを下さったお客様
商品を購入して下さったお客様
本当にありがとうございました。

来年も「誉さんに頼んだら間違いないなあ」と満足していただけるブランドでありますように。
ジュエリーが、回り回って人の心を幸せにしてくれるアイテムであり続けられますように。

来年も、どうぞよろしくお願いいたします!

P.S・・「誉ノ錺(ほまれノかざり)」は有り難い事に
工房もお店も住んでいる所もほぼ徒歩圏内です(笑)。
年末も年明けも、ご連絡をいただければすぐにお店を開けられますので
どうぞお気軽にお問い合わせください!

2020.12.23

久しぶりの再会と、嬉しいご報告/

こんにちは。
いよいよ年の瀬ですね。
「誉ノ錺(ほまれノかざり)」の店舗では、現在予約のお客様優先となっております。
事前にご連絡をいただければ、31日でも元旦でも店舗をご覧いただけますので
どうぞお気軽に、ご連絡下さいね。

さて。先日「誉ノ錺(ほまれノかざり)」からアップした「ガーネットとトルコ石のコンビネックレス」
お話を少ししたいと思います。

その日はスタッフの皆で、工房でお仕事をしていました。
そういう時は、店舗の扉に電話番号を書いた紙を貼らせていただいているのですが
電話がなって、急いで店舗に向かったところ
あれ・・?どこかでお見かけした顔。

実は、もう7年ほどお会いしていなかった方だったのです!
その方は、私が「誉ノ錺(ほまれノかざり)」を立ち上げて間もなかった頃。
まだ名刺を出す事も緊張していた時代にお会いした方でした。

お話を聞くと、なんと結婚が決まったと!
そして結納の場で送るジュエリーを作ってほしいとのお話でした。

久しぶりの再会と嬉しいご報告に、私もとても舞い上がった気持ちになったのですが
ここで1つ、考えなければいけない事が浮上しました。

旦那様曰く「彼女(奥様になられる方)が、ジュエリーを身に付けているところをほぼ見た事がない」
との事。
お話を進めていくと、決してジュエリーが嫌いという訳ではなさそうなのですが・・・。

これは、デザイナーにとってかなりハードルが上がります。
ジュエリーがお好きな方なら(そしてご本人が目の前にいらっしゃれば)、今までどういった
物を購入されたかなどをお聞きすれば、気に入っていただけるデザインもご提案しやすいのです。

でも今回は
・サプライズである(ご本人がいらっしゃらない)
・ジュエリーを身につけているところをほぼ見た事がない(好みが一切分からない)

流石に、頭が真っ白になってしまいました(笑)。

まずは、お客様から奥様の写真を見せていただき
(穴が空くぐらい見せていただきました)
日頃彼女がどんな服装をされているかを聞き
(お好きなファッションのジャンルが少しでも分かればと思いました)
今回の、お客様のジュエリーに対する想いをお聞きしました。

そうやって出来上がったのが、今回の「ガーネットとトルコ石のコンビネックレス」です。

奥様がジュエリーにあまり慣れていらっしゃらなかった場合
急にものすごく凝ったデザインにしてしまうと、気後れしてしまうかもしれない。
色々考えた末に出来上がった形です。

お二人の誕生石を使って
お二人が常に寄り添い合える関係でいられる事を願い、チェーン上に2つ並べました。
デザインで少しアクセントが欲しかったので、それぞれの石座の形を変更しました。
チェーン部分はプラチナにして、全体の色味に変化をつけました。

いつもの私なら
「石座の金属も、それぞれ色を変えましょう!」と言うと思います。
「小さい石を足して、もっとキラキラさせましょう!」とか言うと思います。

そこを抑えて抑えて・・・過度になりすぎないように・・・。
奥様がさっと簡単に身につけられるように・・・。
自分と格闘しながらの製作でした(笑)。

デザインて不思議です。
凝りすぎてもいけない。凝らなすぎてもいけない。
その時、その相手が望むものにすり合わせていく。
自分の思いも込めて。

・・・・・一生勉強ですね(笑)。
奥様がこれを機会に、ジュエリー好きになって下されば良いなと心から思います。
どうぞ末長くお幸せに!

2020.11.11

ダイヤモンドペンダントのリフォーム/

こんにちは。
だんだんと冬の空気になってきましたね。

今日はリフォームのご依頼を受けたので、その流れを写真と共にご紹介したいと思います。
題名の下の写真が、お預かりしたダイヤのネックレスと指輪です。

ネックレスのチェーンは切れていました。
ボールチェーンなので、修理する事も可能なのですが
せっかくなので、チェーンも一新したいとの事。

指輪の方はピンキーリングで、旦那様からのプレゼントだそうです。
ただ、ピンキーリングは他にも持っていらっしゃるので
今回、このネックレスと思い入れのあるピンキーリングの石を組み合わせて
新しいネックレスを作る事にしました。


まずは、ピンキーリングから石を外していきます。


手元はこんな感じです。
なぜこの箇所を切るかと言うと、石の留め方が関わっています。
この石は、指輪の両腕で石を挟む様な感じで留められています。
という事は、腕の片方を切って、幅をを広げれば石を外せるはずです。
石を外す時、一番大切な事は「留められている石を傷付けない事」だと思います。
石に出来るだけ負担がかからない様に、様々な方法を考える事も職人の腕の見せ所です。


カットができました。


切れた方の腕をヤットコで持ち、慎重に広げていきます。


無事に石が取り出せました。


綺麗なダイヤモンドですね!


次に、このダイヤモンドの石座を作っていきます。
画像の上の方に写っている線が、石座の爪になります。


石座を組み立てて、爪をロウ付けをして


石座ができあがりました。


次に大きい方のダイヤモンドを、石座から一旦外します。
ロウ付けしないといけないので、大きな石を留めたまま火をあてるのは危険ですものね。
こんな風に、ヒートフォームで石座を固定します。


これはプラチナなので、そっと石にかかっている爪を起こしていきます。


手元はこんな感じ。
薄い刃を、ダイヤと爪の間に入れて爪を起こす様な感じです。
気を付けないと、爪がちぎれたり、石に力が伝わって割れてしまうので細心の注意を払います。


無事に石座から外す事ができました。


先ほどのダイヤモンドの石座の裏に、小さな丸カンを取り付けました。


チェーンが通っていた隙間にも、丸カンを付けました。
これには大きな理由があるのですが、それは後ほどお話しします。

小さい方のダイヤモンドを、石座に留めていきます。


慎重に慎重に・・・。


石が留まりました。

次に大きなダイヤモンドの方も、元の石座に留めていきます。

無事に留まりました。
イエローダイヤは美しいですね!


両パーツとも、軽く磨きました。

先ほど付けた小さな丸カンもピカピカですね。
次にこちらを組み立てていきます。


丸カンに通して


ヤットコで口を塞ぎます。


こんな感じ。
次に、このヤットコで閉じた丸カンの口をロウ付けします。


これは「仮着機(かちゃくき)」と呼ばれる機械です。
簡単に説明しますと、電流を流してくっつけたい金属同士の表面を少しだけ溶かす機械です。

ロウ付けで一番大変なのは、溶接している時に素材が動く事。
とにかく相手は小さなパーツです。バーナーの風圧だけでも飛んでしまったりします。
プラチナや金のパーツをロウ付けで組み立てて行く時、この仮着機はとても重宝します。
(シルバーには向いていません)

そして今回は、この仮着機の別の機能を使います。
とても小さな箇所のロウ付けが、この仮着機では可能なのです。


この様にピンセットで挟んで、ロウを置き、一瞬だけ熱を通します。


無事にロウが溶けて、丸カンの口を閉じる事ができました。


もう一度、全体を磨いていきます。


細かい所は、リューターで丁寧に磨きます。


綺麗に磨けました。

さて。ここからはチェーンを通す箇所につけた丸カンの種明かしです。

実は今回、お客様からご要望がありました。
「チェーンの中でトップがあっちこっちにずれるのが嫌なので
トップがチェーンの中心からずれない様にしてほしい。」
との事です。

普通なら、小さな丸カンをトップの両端に取り付けて、チェーンを通す形に変更するのですが
このペンダントトップは、構造上丸カンを付けるとすっきりしたデザインを損なう様な気がしました。
そこで今回は
「本来のチェーンが通っていた部分の内部に丸カンを取り付け、それを潰す」
と言う方法にしました。
この方法なら、よっぽど強く引っ張らない限りチェーンが動くこともありません。


チェーンを丸カンに通します。


ヤットコでそっと丸カンを潰します。


潰れた丸カンが見えるでしょうか?
これでチェーンが固定されました!


完成です。


本来のすっきりしたデザインを活かせたと思います。
イエローダイヤモンドとホワイトダイヤモンドのコントラストも美しいですね。
チェーンもカットの入ったものを使いましたので、キラキラです。

お客様には
「違うデザインのネックレスを新しく買ったみたい!」
と喜んでいただけました。
プラチナは、磨くと本当に綺麗になりますね。
生まれ変わったペンダント。末長く使っていただければと思います!

2020.10.28

オーダーメイドを更新しました「ブラウンダイヤモンドのピアス」/

こんにちは。
今日は、新しいオーダーメイドを更新しましたので、そのお知らせです。

詳しくはコチラをご覧下さい→「ブラウンダイヤモンドのピアス」

とてもすっきりとしたピアスです。

お客様のご要望は「華やかだけど、お客様よりは目立たないようなおしゃれなピアス」。

お客様は美容室のオーナーです。
長年の苦労の末、ご自身のお店を立ち上げられ、その後沢山の美容師を輩出されてきました。

大切なのは「お客様を輝かせる事」。
その為に、出来るだけ自分の装飾品などは控えめにされていたとの事です。

彼女の、社長としての思いやりや指導力には、本当に頭の下がる思いで
いつもお話させていただいておりました。
そんな彼女に似合うピアスを考え抜き、出来上がったのが
この「ブラウンダイヤモンドのピアス」です。


すっきりとしたフォルムが、彼女にぴったりですね。
そして、これは、本当に細やかなこだわりなのですが。
このピアス、本体と、チェーンをつなぐ丸カンがありません。

このピアスは、上の写真のように、チェーンの垂れている面が少しくり抜かれています。
そこに、チェーンを通したプラチナ線を渡して、両端を溶接したのです。

このサイズのピアスで、丸カンが目立つと無粋だと思いました。
どんなに小さな丸カンでも、デザインの流れがそこで止まってしまうような気がしたのです。

そして、職人みんなで考えて考えて、試し抜いた結果、このやり方に辿り着きました。

お客様が、最初からお持ちのブラウンダイヤモンドと合わせて撮った写真です。
「これはセット使いが出来るね」と、お客様にはとても喜んでいただけました。

今、心底ホッとしています(笑)。

シンプルである事の難しさを、痛感した作品になりました。
本当に、デザインも作りも一生勉強ですね!