石取れ修理と新品加工

2020.09.04

石取れ修理と新品加工/

こんにちは。
ようやく暑さが例年並みになってきた感じでしょうか。
今年の夏は暑さとコロナで、個人的には一切外に出ない夏になってしまいました。
来年は、もう少し季節を楽しみたいものですね。

そんな夏でしたが、お客様が修理のご依頼を下さったので
今回は修理の流れを写真で撮ってみました。


こちらが、お預かりした指輪です。
「誉ノ錺(ほまれノかざり)」でお作りさせていただいた「トライバルと花モチーフのマリッジリング」です。


こちらが、お預かりした当初の写真です。
長く使って頂いているので、小キズが目立つようになってしまいましたね。
でも職人側としては、ずっと着けて下さっていたのだなと嬉しく感じる瞬間です(笑)。


そして、こちらの写真。
中心にサファイアを留めていたのですが、なくなっています。
職人とルーペで見ながら相談したのですが
爪が飛んでいたり、大きく変形している箇所はありませんでした。
どうも、サファイアが割れてしまったようです。

この指輪は、少し特別な指輪で
お花部分が、指の腹側にくるようなデザインになっていました。
お客様に聞いたところ、硬いものを握るようなお仕事があった模様。
どうも、その繰り返しでサファイアが割れてしまったようです。

と言う訳で。
今回は、石を留め直して、新品加工もさせていただく事にしました。

枠のサイズに大体合ったサファイアを用意します。


まずはこんな台で、指輪を固定します。

そして石のサイズを改めて測ります。
万が一、はさみ損ねて石が飛んでもなくならないように、下にチリトリを置いています。


石座の形を整えていきます。
「石座をくる」と言う言い方をするのですが、こんな形の先で石座の形を整えます。


これはピンバイスというもので、今回のようなカッターの先を、鉛筆みたいに使える道具です。


ピンバイスの先に、石座をくるカッターをしっかりと固定します。

ルーペで見ながら、石座の形を整えていきます。
今回は、削りすぎると石座が広がって、石が留まらなくなってしまうので
ピンバイスを使い、手動で慎重に削っていきます。

手だけ見るとこんな感じです。


石座にカッターを差し込んで、指で回転させています。
これで少しずつ、石座の内側の金属が削れていきます。


削れた金属をブラシで出来るだけ取り除きます。


ワセリンを軽くつけた竹串で、サファイアを石座に置いてみます。


石が、良い感じの深さにおさまってくれました。


次は、顕微鏡を使って、石を留めていきます。


手元の写真です。タガネというもので、石の周りの金属を寄せて爪にします。
ここも気をつけないと、石に力が入り過ぎて割れてしまいます。


綺麗に留まってくれました。


ワセリンや、削りカスを洗ってみました。
石は無事に留まっているようなので、ここから新品加工にうつります。


まずはヘラという工具で、大きな傷をならしていきます。
というのも、キズがあまりに深いと、そこを削るような磨き方になってしまうので
指輪自体の形がいびつになったり、指輪が薄くなってまう事があります。


手元はこんな感じです。
ツルツルの金属を擦り付けて、でこぼこの傷をならしています。

これが、ジュエリー全般を磨く機械です。バフ台と呼ばれています。
下に転がっているのは、リューターの先に付ける様々なパーツと色々な種類の磨き粉です。

こんな感じで磨いていきます。

手元です。
ものすごい速度で回転している、磨き粉のついた布に金属をあてて傷を取っていくような感じでしょうか。
文章で書くのは難しいものですね(笑)。


大きな箇所が磨けたら、最後は細かい部分をこんなパーツで磨いていきます。
この円盤みたいなところが回転します。この円盤は硬い紙でできています。
例えば缶ビールの6本セットのパッケージとか。
職人さんによって、この紙の部分は好みがあるようでダンボールだったり、何かのパッケージだったりします。
なので、工房の隅に積んである紙の束を「ゴミ?」と思って捨ててしまうと
とても悲しい顔をされる事があるので、要注意です(笑)。


磨き終えたら、超音波洗浄機で磨き粉を綺麗に洗い流します。

綺麗に磨けました。


サファイアも、きちんと留まっています。
小キズもなくなりましたね!

これが、今回の修理と新品加工の流れです。
修理や新品加工とひと口に言っても、その方法は様々です。
作りを分かっている人でないと出来ない作業も沢山あります。

何度もコラムでは書いていますが
「誉ノ錺(ほまれノかざり)」の作品は、全て一流の職人の技術の上に成り立っています。
美しいものを作る事と、それを作れる職人を育てていく事。
今は、そのどちらもが、とても大切な事だと思います。