誕生石シリーズ ー6月「パール」ー

2017.04.26

誕生石シリーズ ー6月「パール」ー

こんにちは。
今日は6月の誕生石「パール」のお話をしたいと思います。

パールの和名はもちろん「真珠(しんじゅ)」です。
有機物からできている、珍しいジェムストーンと言えます。
生きた貝の中から見つかるパールは、昔から極めて不思議なものとして考えられてきました。
「貝の中に月の雫が宿った」
「貝が人魚の涙を飲み込んだ」
などと言われた最もな理由の一つは、その内側からふわりと滲み出るような独特の輝きのためだと思います。
その柔らかい輝きは、沢山の人を魅了し、日本では冠婚葬祭の欠かせないアイテムにもなっています。

実はパールは、5世紀の初めには中国で人為的に作る試みがなされていました。
それは湖に生息している「カラスガイ」という貝を使った
殻の内側にへばりついた状態の真珠だったそうです。
1740年代にも1880年代にも、養殖真珠を作る試みは世界で行われてきました。
でも、そのどれもが生産を安定させることはできませんでした。

そんな中、この歴史を変えたのは「御木本幸吉(みきもとこうきち)」さん。
有名なジュエリーブランド「ミキモト」の創業者です。
彼の考案した養殖真珠の技法のおかげで、安定した真珠の供給ができるようになりました。

パールには「海水パール」と「淡水パール」に大きく分けられます。
昔は「海水パール(あこやパール)」が一番価値の高いものとされていたようですが。
私は正直なところ、あまりそうは思いません。
最近では、淡水パールの中でもとても美しいパールが存在します。
テリ、ツヤ共に淡水パールの中でも群を抜いて美しいものを「湖水パール」と呼んでいます。
たまに百貨店などにも出展されていますので、一度ご覧いただけたらと思います。

南洋パールと呼ばれるパール

核を持たない黒蝶パール

様々な色を持つ淡水パール

湖水パールと呼ばれる淡水パールの最高峰

そして、デザイナーとして思うことは
「パールはデザインが難しい」ということです。
理由は様々あると思いますが、私が感じるのは
・日本人の中にある「パール=冠婚葬祭にだけつけるもの」という観念が強い
・人工パール(コットンパールなども含む)などの人気で、高額な本物のパール自体の売れゆきが厳しい
という2点です。

この写真は「誉ノ錺(ほまれノかざり)」でイチオシしている「華真珠」というパールです。
詳しい内容はコラム「華真珠について」を読んでいただけたらと思うのですが
この華真珠をご覧になったお客様の中には
「せっかくの美しいパールの表面をカットしてしまうなんて勿体無い」
と仰られる方もいらっしゃいます。
私などは「とにかく美しければいい」という考えなのですが、そういうお言葉を聞くたびに
「日本人の中にある『真珠』のイメージを壊すのは難しいな・・・」
と思います。

実はパールは、カジュアルに着けても清楚な雰囲気を残してくれるとても貴重なアイテムなのです。
でも、正直、カジュアルでおしゃれなパールのデザインを手がけているブランドはあまり多くありません。
デザイナーとして、パールについた固定概念に、一生かけて立ち向かっていこうと思います(笑)。

一粒の光ネックレス

写真は「誉ノ錺(ほまれノかざり)」の作品「一粒の光 シンプルネックレス」です。
パール独特の清楚な輝きは残しながら、華やかさも感じられるネックレスです。

そしてパールのお手入れ方法ですが。
パールは石ではありません。極端に言うと貝に近いのです。
水の中から生まれていますが、水にはすこぶる弱いです!
パールの指輪をつけたままお皿洗いをしたり
汗のついたネックレスをじゃぶじゃぶ水で洗うのはお勧めできません。

パールは、電子顕微鏡でしか見ることのできない、ごくごく小さなカルシウム結晶の一つずつが
たんぱく質の薄いシートに包まれ、それが何千億と集まってあの美しい色と輝きを放っています。
なので、温度が高かったり、水分が残ったりしていると、たやすく変色してしまいます。

お皿を洗う時は、パールの指輪は外す。
汗がついたネックレスは、柔らかい布で丁寧に拭き取る
などしていただけたらと思います。
また、使い続けて曇ってしまったパールも、業者に出せば「クリーニング」をしてくれるようですが
お金はかかってしまいます。
日頃のちょっとしたお手入れで、パールはその輝きを長く保つことができますので
どうぞ丁寧に扱ってあげてください。

またパールの硬度は2.5〜4.5と非常に柔らかい(もろい)ものです。
ダイヤモンドや、サファイアのジュエリーと一緒の箱には入れないでくださいね。
パールとダイヤモンドやサファイアが当たると、パールに傷がついてしまいます。

パールは、どの石とも比べられないような、独特の輝きを放つ美しいものです。
繊細であることは間違いありませんし、お手入れも人工のパールよりは大変かもしれません。
でも、長い時間海の中で貝が抱き続けた結果、あの奇跡のような美しさが生まれています。
生命の神秘に思いを馳せながら丁寧にお手入れをして、上質な時間を体験してみてください。

※写真の一部は「アサオ工芸」様より引用させていただきました。