誕生石シリーズ ー5月「エメラルド」ー

2017.05.30

誕生石シリーズ ー5月「エメラルド」ー

こんにちは。
今日は5月の誕生石「エメラルド」のお話をしたいと思います。

エメラルドの和名は「翠玉(すいぎょく)」「翠緑玉(すいぎょくりょく)」
「緑柱石(りょくちゅうせき)」などと呼ばれています。
5月という爽やかな季節にふさわしい緑色の美しい石です。
エメラルドの鉱物名は「ベリル」と言います。
3月の誕生石でもある「アクアマリン」も、このベリルに属しています。

古代の人々は、「緑色の石には大地の精霊のパワーが宿っている」と信じていました。
その当時は緑色の石をまとめて、ラテン語で「smaragdus(スマラグドス)」と呼んでいましたが
その中には、エメラルドでない石も含まれていたようです。
その後ギリシア語やペルシャ語を経て、英語である「Emerald(エメラルド)」になりますが
これは「最高のスマラグドス(緑の石)」に与えられた称号とも言えるでしょう。

美しい緑色

エメラルドの美しい緑色の主成分は「クロム」です。
このクロムとエメラルドが育つ条件から、エメラルドの内部には多くのインクルージョンが内包されています。
「インクルージョン」とは、鉱物に入っている液体や小さな結晶などのことです。

薄黒いモヤのように見えているインクルージョン
端に白っぽいインクルージョンが見える

エメラルドにインクルージョンが多く発生するのは、エメラルドの最大の特徴とも言えます。
「インクルージョンのないエメラルドを探すのは、砂場に落とした1本の針を探すようなもの」
だと言われるほど。
そこで生まれたのが「mossy(モッシー)、jardin(ジャルダン)」というような愛称です。
mossyは「苔むした、苔の生えた」という意味で、jardinは「庭」という意味です。
石の中に庭があるというのはロマンティックな表現ですね。

ただ、このロマンティックなインクルージョンですが。
実はこれ、制作側としては命取りになります。
「職人泣かせの石」だと、私は思っています(笑)。
インクルージョンが沢山含まれている石と言うのは、基本的に衝撃にとても弱いです。
石の内部に、沢山のヒビがすでに入っているようなイメージです。
少しの振動や衝撃で、中のヒビが石の表面に上がってくる時があるのです。

石留めをしている衝撃で割れる・・・
超音波洗浄の振動で割れる・・・
お客様からお預かりした、石をルーペで見るとすでに割れている・・・
本当に数え上げればきりがないくらい(笑)。

とりあえずエメラルドは「割れやすい石」だと考えておいて下さい。
エメラルドの指輪やネックレスなどで汚れてしまった場合は
まずは近くの宝石屋さんか購入されたお店に持って行かれることをお勧めします。
柔らかく泡立てた石けんで優しく洗われても良いのですが
エメラルドには、ほとんどがインクルージョンを目立たなくするための
「含浸処理」という処理が施されています。
石けんの成分によっては、含浸処理に使われているオイルや樹脂がぬけてしまう可能性もあるので・・。
まずは、専門の機関に聞いてみられる方が無難だと思います。
身につけている時も、強い衝撃がかからないように気をつけてあげて下さいね。

写真は、「トラピッチェエメラルド」と呼ばれているものです。
エメラルドが育つ時に別の結晶が形成されたもので
その形がさとうきびを絞る機械の歯車に似ていることから、このような名前が付いています。
歯車の入り方の美しさによって、値段が変わってきます。

こちらはエメラルドキャッツアイ。
石の真ん中に、猫の目のような綺麗な光の線が1本入っています。
こちらもとても希少な石です。

インクルージョンも、トラピッチェも、石の生まれる場所が作り出したエメラルドの個性です。
石の特性や性質を知って、友情を育むように。
宝石とも長くお付き合いしていただけたらと思います。

※写真は「アサオ工芸」様より引用させていただきました。